台風や大雨で、お住まいの居間やその他の部屋の天井から漏水があった時、さすがにどのお宅でもそのままにはしておきませんね。
以前そのお宅を施工した業者や、あるいは、漏水箇所を直してくれる業者に補修を依頼します。
しかし、意外に多くのお宅が、どこからどのようにして雨漏りしたのか、原因は何だったのか、そして、それをどのように補修したのか、業者に確認していません。
目次
すでにバルコニーの雨漏り補修を終えていたお住まい
このお宅では、以前居間の天井から雨漏りがあり、すでに業者により対応済みでした。雨水の浸入箇所は、バルコニー手すり。その手すり壁の笠木(かさぎ)を新しいものに交換してありました。ここで、「笠木」とは、バルコニーの手摺壁の頂部をカバーする金物のことです。
このお宅の場合は、「手すり付き笠木」でした。
笠木の上の支柱に、パイプの手すりが取付くタイプです。そして、交換した新しい笠木は、パイプ手すりの部分がない、アルミの笠木だけのものに取替えられていました。(実は、パイプの手すりだった分だけ手すり高さが低くなってしまったわけですね)
漏水のあったこのバルコニーは、今では一般化している「建物一体型のバルコニー」で、床は塗り防水です。
このタイプの雨漏りの要注意箇所は図のような場所です。意外に思われるかも知れませんが、本件のような「手摺(てすり)壁」からの漏水被害は、かなり多いというデータがあります。
そして、このバルコニーの下にある居間・食堂の天井は、まだクロスが破損したままとなっていました。(下の写真)
奥様:「業者に修理してもらって雨漏りは止まりましたが、天井はまだこの状態です。どうしたものかと・・・」
直下に部屋のあるルーフバルコニーは、雨漏りが起きると生活に重大な問題となります。
奥様:「あのときは家族で大騒ぎでした」
と、しみじみ話されました。
ちょうどこのお宅にも、雨漏りの起きたオープンなバルコニー(A)と、透明庇のあるバルコニー(B)とがありました。(仮にA、Bと呼ぶのは、違いの説明のためです)
オープンな(A)は下に居間・食堂のあるルーフバルコニー、庇のある(B)は庭に突き出していて下は屋外です。
これは、「雨ざらし」で直下に居室のある(A)と、上部が庇で下は屋外の(B)という、雨漏りリスクの比較で、やはり(A)で雨漏りが起きてしまったということですね。
(B)は雨漏りが起きていないので、笠木は昔のままで、笠木上に手すりが載り、ビスで固定してあります。固定プレートと笠木、そしてビスの部分はそれぞれシーリングしてあります。
シーリング(コーキングとも言います)は年中風雨、日射に晒され続けて劣化するので、直上に屋根や庇のない(A)のシーリングが経年劣化し、浸水したのでしょう。
雨水が浸入しても、下には防水層があり、ただちに漏水するわけではありませんが、おそらく防水層を貫通するクギ穴などから浸入し、下の天井裏に到達したのではないでしょうか。
やはり、定期的なシーリングのメンテナンスは、言うまでもなく、重要ということですね。
バルコニーのFRP防水、排水口のメンテナンス
雨漏りに関しては、今回はあくまで事後、かつ処置後の観察でしたが、本件では、関連するいくつかのアドバイスを申し上げました。
建物一体型バルコニーでは、先ほどの手摺りなどの要チェック箇所のほか、床の防水にも注意が必要です。
最近の住宅のバルコニーでは、FRP(繊維強化プラスチック)防水が多く使われます。ガラス繊維を樹脂で固め、表面に保護塗装(トップコート)をして仕上げます。継ぎ目のない、固くて丈夫な防水層となるので、安心感があります。
しかし、FRP防水もまた、定期的なメンテナンスが必要です。
FRP防水のおかれた状況や仕様によって違いはありますが、耐用年数が10年程度であることから、おおむね10年をメンテナンスの周期と考えて、外壁や屋根のメンテナンスと合わせて実施されると良いでしょう。
FRP防水に限らず、バルコニーの雨漏りの原因で多いのは、排水管が詰まってしまうことです。
排水口(ドレン)まわりに落ち葉やゴミが溜まって排水管を塞いでしまうことのないように、定期的に排水口まわりを掃除するようにしていただきたいと思います。
以上を図にまとめておきます。
断熱材の確認、雨漏りの兆候の確認
雨漏りのために破損した居間天井の補修に関して、天井のクロス下地を補修する際に、ルーフバルコニーの下の天井面に点検口を新設することを提案しました。
住宅の断熱は、断熱材と断熱性能のあるサッシによって、住まいの内部がぐるりと隙間なく包まれることが大切です。断熱材が途切れていないことは、熱のロスを防ぐために重要なことです。
今回のようなルーフバルコニーの直下、あるいは、下屋(げや)の天井部分などは、やや昔の住宅では断熱材が途切れがちでした。
さらに浴室(ユニットバス)の床下が外気とつながっていないかも含め、住宅の省エネ・省コストの観点から確認してみるとよいでしょう。
こうした点から、今後居間の天井を補修される際には、バルコニー下に天井点検口を設けておいて、豪雨のあった後などに、雨漏りの兆候がないか確認できるようにしておくことをおすすめしました。
本件はルーフバルコニー下天井のお話ですが、下屋天井への点検口設置の例は、このコラムの他のところで扱っています。
報告書届きました、ありがとうございます。
雨漏りの件、あとは居間の天井の修理だけと思っていましたが、まだいろいろ宿題がありそうですね。
掃除が必要と言われてちょっと赤面ですが、確かにメンテナンスって大事ですね。
(以下省略)
居間天井からの漏水は一大事件であったと思います。
木造住宅の場合、天井からの漏水は生活の場に支障があることはもちろんですが、天井内に入った雨水が木造の駆体(骨組み)の腐朽や蟻害(シロアリの被害)の原因となる恐れもあります。
漏水箇所を修理されて一安心、というところでしたが、少し長い目で考えて、定期的なメンテナンスと、再発の兆候がないかどうかの確認をしていただきたいと思います。
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