戸建て、マンション問わず、収納スペースが足らない、という話はよく聞きます。天井の上に設ける、ロフトや小屋裏収納(屋根裏収納)は、そうした収納不足を補ってくれます。
ロフトは部屋の一部が二層になっていて、その上の場所を指すことが多く、部屋の下の部分と空間的なつながりがあるのが一般的であるのに対し、小屋裏収納(屋根裏収納)は空間的には独立していて、収納式のはしごなどで下の部屋と連絡するものを指すことが多いようです。
目次
夏場異様に暑くなる小屋裏収納
はじめに「気になっていることはありますか?」とおたずねしたところ、すかさず、
依頼者様:「2階の子供部屋の屋根裏収納が、夏異様に暑くて」
とのお答え。
収納式のはしごで上る小屋裏収納(屋根裏収納)は、一般に夏期は暑くなりがちです。
しかし、「異様に暑い」と強調されるので気にしながら、小屋裏(屋根裏)に入ってただちに納得。収納の壁の外側(屋根裏側)のボードが丸見えです。
つまり、屋根裏と収納側とがボード一枚のみで仕切られただけ。
一般部分の天井裏には、断熱材のマットが敷き詰められていて断熱されているのに、収納の部分はまるで断熱されていません。
写真をご覧になって、
ご夫妻:「実は、こうして我が家の天井裏を見るのも初めてですが、屋根裏収納の裏側がこんなふうになっているとは、はじめて知りました」
とのご感想。
断熱材で包み込むこと
これは、いわば典型的な断熱材の欠損の例でした。
住まいの断熱の基本は、「居住空間全体を断熱材で包み込む」こと。天井(または屋根)、外壁、床に断熱材を、そして開口部(窓)に断熱性のある建具を使います。
理屈ではわかっていても、実際はこの「包み込む」ことは意外にできていません。特に中古住宅では、こうした断熱欠損が見られます。
一方、下の写真は他の物件ですが、2階の洋室に小屋裏(屋根裏)収納を天井裏側から見た写真です。このお宅は小屋裏収納部分が、ご覧のように断熱材で「包まれて」います。
本件の屋根裏収納は、2階の天井と収納部の床が別になっていて、収納部の下にも断熱材が敷かれていました。
しかし、2階の子供部屋と屋根裏収納は、収納はしごの部分でつながっているので、その部分から熱が出入りしてしまい、熱のロスとなっていました。これもまた一種の断熱欠損と言えます。
我が家の診断と報告書、ありがとうございました。
分りやすくまとめていただいたので、私たちでもよく理解できました。
特に、子供部屋の天井裏収納が夏場ひどく暑くなる件。天井裏は夏、殺人的に暑くなるのですね。断熱材ってぜったい必要なものだと思い知らされました。
(以下略)
このように、夏に灼熱の小屋裏収納(屋根裏収納)としないためには、まず図のように小屋裏収納の部分も含めて、断熱材で包み込むことが必要です。
小屋裏換気の重要性
そして、もう一つ大切なのは、「小屋裏換気」つまり天井裏の空気の入れ換えです。
しかし、そもそも天井裏など覗いたことがない、というお宅が大多数ですので、ご自宅の天井裏の換気がどうなっているのか、またそれが妥当なのかどうか、意識されない方が多いのではないでしょうか。
このお宅では、写真のような「軒裏換気孔」があり、ここから天井内の換気を行っています。
小屋裏(天井内)の換気は、ここで話題となっている熱気の排出や湿気の排出などのために必要なものです。空気を入れ換えることで、天井内が高温になるのを防ぎ、天井内で結露が発生するリスクを減らすことができます。
ここからは、少しだけ専門的な話になりますが、換気孔のタイプと必要な開口面積については、住宅金融支援機構の「木造住宅工事仕様書」などに、その目安が示されています。それをもとにまとめ直したのが次の図表です。
図表の中の数字は、換気孔の必要面積を計算するためのもので、天井部分の床面積に数値をかけて算出します。
本件のお宅の換気孔は、軒裏にある換気孔だけの吸排気両用のタイプなので、表の「ロ」のタイプになります。
しかし、吸排気両用のタイプより、吸気・排気を別々に行うタイプのほうが効率が良く、面積も軽減されます。たとえば、軒先から吸気して、屋根の上方から排気するような、「ハ」~「ヘ」のようなタイプです。
暖気は上昇するので、軒先に吸気孔、屋根の高いところに排気孔があるタイプのほうが基本的には効率的です。
そうしたことから、最近の住宅では、軒の部分で吸気して、屋根頂部の棟(むね)の部分から排気する「換気棟」を採用する例も多くなりました。
棟に排気口を設けるため、雨水浸入を防ぐ機構となっています。正しく施工されれば、効率的な小屋裏換気ができます。
表の「へ」などが換気棟に該当します。
まとめ:小屋裏収納(ロフト)の夏場の暑さ軽減
以上をまとめて、夏場の暑さを軽減するには、
- 必ず小屋裏収納の部分も含めて「断熱材で包み込まれて」いること
- 屋根裏にこもる熱気の排出や湿気の排出のために「小屋裏換気」が確保されていることを確認すること、できれば効率的な吸気・排気の組み合わせとすることが望ましい
と、言ったことが、ポイントになります。
N 研インスペクション ~ N 研(中尾建築研究室)の住宅診断 お問い合わせ・お申し込み
私たちN 研(中尾建築研究室)の住宅診断各サービスへのお問い合わせ・お申し込みは、この下の「お問い合わせ・お申し込み」フォームよりお願いいたします。
電話( 03-5717-0451 )またはFAX( 同 )でご連絡いただいても結構です。
※ 電話の場合は、業務の都合上対応できない時間もございます。ご了解ください。
※ FAX の場合は、お手数ですが、上記のフォームにある質問項目についてお知らせください。
※ FAX でお申し込みをされる場合は、この書式をダウンロードしてお使いください。
(FAX 用)お申し込み書ダウンロード
N 研(中尾建築研究室)の住宅診断 ~ 代表が直接担当いたします
住宅診断にはN 研(中尾建築研究室)代表の中尾がお伺いします。業務の内容によっては、補助メンバーや、ご要望により英語通訳が同行する場合もありますが、 原則代表がメインでご対応いたします。
※検査・調査時に英語通訳者の同行をご希望の場合は、こちら
If you wish to have an English interpreter to be accompanied upon house inspections or surveys, please click here.