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内覧会の季節~内覧会に同行は不要?
開催時期は、年度内引渡しと言うことで3月に多いですが、年内引渡しである12月にも多いです。ちょうどこの時期、師走の内覧会、そのご相談・ご依頼、少なくないです。
最近では、こうした内覧会に住宅診断を依頼される方が増えてきました。やはり、ネットの威力なのでしょうね。
当コラム(ブログ)でも、以前、内覧会に関するお話をひとつ投稿しました。
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新築診断(内覧会)について考える ~「内覧会」は「お披露目会」ではありません
今回は、新築住宅の内覧会(竣工検査)について考えます 目次1 1.誰も住んでみたことがない「住まい」 ~ 新築診断を行う意味は?2 2.「内覧会」とは、ただの見学会ではなく、ましてセレモニーでもありま ...
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その一方、内覧会でのインスペクション不要論(同行不要論)も相変わらずありますね。診断など、おカネをかけるだけムダ、というわけですね。
しかし・・・
先日の内覧会では、私達が言いにくいところをバシッと言って頂き、心強かったです。 (都内 M様)
これは、内覧会同行のご依頼を頂いたお客様のメールの一部です(太字はN研強調)。もちろん、社交辞令的な部分もあるでしょうけれど、診断を行う私たちにとって、励みになる言葉でした。
ところで、ここでは最初から「内覧会」を「住宅の買い手による竣工検査」といった意味でお話を始めました。
本来は「内覧会」には「限られた人々に披露する非公式な見学会」というような意味があります。さらに「クリニック(診療所)の内覧会」のように開業にあたっての地域住民への集客用イベントであったりもします。
対象を戸建住宅やマンションに限っても、同業他社や一般ユーザー向けの「内覧会」というものもあり、この場合はお披露目のイベントに近いものとなります。
そして、個々で言う住宅の契約者に対する「内覧会」とは、竣工検査、完成確認であり、「契約内容の確認」の場です。
しかし一般に、素人に近い買い手に対して、新築住宅の「内覧会」にはどのような意味があるのかを知らせた上で、内覧会が開催されているでしょうか?
もちろん、売り手からの、住宅設備機器などの取扱い説明は大切なことで、それも内覧会の一部と言えるでしょう。しかし、専門知識の有無にかかわらず、売り手と買い手が対等の立場で、契約内容を確認する場であることを認識した上で内覧会に臨みましょう。
とはいえ、多くの人にとってほとんどはじめての経験ですし、契約前から完成直前まで、ずっと何かと相談に乗ってくれた売り手側の担当者の手前、これからの関係も維持したいという思いもあり、「言いにくいところ」を口に出せずにいたり、「どこまで言って良いものなのか」と躊躇しているうちに時間が過ぎてしまう、と言うのが正直なところでしょう。
戸建住宅の内覧会
戸建住宅と言っても、注文住宅の場合は、買い手(建て主)は住宅の着工前の段階から関わっていますが、建売住宅・分譲住宅の場合、買い手は工事中または完成後から関わることが一般的ですね。
建売住宅と分譲住宅は、ほとんど同じよう意味で使われますが、分譲地に建てられ販売されるのが分譲住宅、個別的な土地に住宅が建てられ販売されるのが建売住宅です。どちらも土地と建物がセットで販売されます。その点では、まず土地が決められて、そこに住宅が設計され建てられる注文住宅との違いです。
注文住宅の場合、着工段階からずっと自邸の工事進捗を眺めてきて、工事の各段階で検査を入れてきた買い手にとっては、内覧会(竣工検査)はいわば最後の総チェックでしょう。例えば、基礎配筋検査や上棟時躯体検査、仕上前断熱検査や防水検査などを経た後の内覧会(竣工検査)であれば、躯体や断熱・防水のことからはひとまず離れて、内外仕上げや建具、あるいは住宅設備などに集中して確認できますね。
一方、工事の途中や竣工直前、あるいは竣工後に建売住宅・分譲住宅を購入した買い手にとっては、内覧会(竣工検査)と言われても、その前の躯体、断熱や防水のことまで気になる方も多いのではないでしょうか。
建売住宅・分譲住宅で「完成しましたので内覧会です」と案内されても、壁や床の表面的なキズとかスキ間、あるいは住宅設備の使い方などに気を取られながらも、この住宅は本当にちゃんとした、しっかりした造りなのだろうか、というような漠然とした不安を抱えているのかも知れません。
そうした類いの漠然とした不安が、内覧会同行のご相談やご依頼の背景には、少なからずあるのではないかという気がします。
内覧会についてのお客様からのお問い合わせで、次のようなやりとりがありました・・・
小屋裏については(中略)新築の場合は、むしろ天井裏の断熱材の敷設状況(グラスウールマットの乱れ)を確認したり、天井内の金物のボルトなどの状況を確認したりします。 (N研)
そうなんです。私のこだわりはどちらかというと断熱材がきちんと敷かれてるかとか見えない部分です。 (都内 F様)
このお客様は、「見えない部分」への「こだわり」を挙げておられました(太字はN研強調)。つまり、見えないところへの不安でした。
他方、売り手、つまり内覧会主催者側とすれば、買い手のそうした漠然とした不安よりも、この住宅をどのように使い、どのように住んでもらうか、という方向に注力して、竣工時の表面的なキズの類いは是正対応するにしても、「今さら」その住宅がしっかりした造りかなどという話は勘弁して、というのが正直なところではないでしょうか。
そんな時にもし、以前のブログでも触れたような、小屋裏(屋根裏)の金物が一箇所緩んでいるとか、床下の断熱材が一箇所歪んでいるとか、基礎の水抜き穴の処理が不十分で、などということが分かったりしたら、どうでしょう。
内覧会同行不要論の人たちは、そうした点についてはどう思っているのでしょう。
内覧会同行は、その手のサイトでよく見かけるようなレーザー水準器で、仕上精度の垂直・水平をチェックするような、いわばパフォーマンスを行うだけではありません。
もちろん、床下点検口を開けて床下の断熱材や基礎状況をチェックしたり、浴室天井内を覗いてダクトを確認したり、天井点検口を開けて小屋裏を覗いて断熱材や小屋組の不備の有無を確認できる人たちなら大丈夫ですね。最近では、ネットにいろいろな診断蘊蓄が載っているでしょうから。
でも、そうでない方たちで、知合いにも建築や住宅の関係者がいないという方たちから、ご相談・ご依頼をいただくわけです。
かつてのように、地域に根ざした工務店が、住宅完成後もずっと面倒を見てくれるというような、古き良きシステムがなくなり、住宅は商品、住宅購入は純然たる契約行為、となってしまった今日、買い手が内覧会という名の竣工検査に重きを置くようになったのは、むしろ自然な流れかも知れません。
内覧会や住宅検査の相談・依頼の実際
話を戻しまして、注文住宅と分譲・建売住宅。
分譲住宅、建売住宅を購入された方々の場合、時間的に当然とも言えますが、内覧会が近づいてきてから、内覧会同行のお問い合わせをいただくことが少なくありません。「○月○日に内覧会を予定していますが、対応可能でしょうか」といったお問い合わせですね。
たとえば・・・
内覧会のインスペクションを検討しているのですが(中略)、日程が○月○日(土) 10:00~ で予定しているのですが、ご予定はいかがでしょうか?
(神奈川 Y様)
と、いったようなお問い合わせから始まります(太字はN研強調)。
そして・・・
内覧会同行、屋根裏、床下込み(中略)どれくらい時間を要しますか? (都内 H様ほか)
といったようなお話から、具体的な内容に入ってゆくのが一般的です。
もう少し早めに契約された方からは、内覧会だけでなく、「上棟検査と内覧会を対応してもらえますか」などと言った感じで始まったりします。そこから、おおよその予定時期や住宅の規模概要などのやりとりが始まります。
たとえば・・・
現在、○○市で新築一戸建てを建設中で、今は基礎の配筋とコンクリートくらいまで進んでいます。
今後、上棟段階と内覧会での住宅診断を希望していますが、可能でしょうか。 (都内 M様)
一方、たとえば注文住宅でご自宅の建替えを考えられている方からは・・・
現在、家を建て替えする予定で(略)契約前の段階です。建てるタイミングは○月ごろからです。(略)第三者の検査を依頼したいと思います。特に基礎の質や建築途中での壁の断熱、防水、天井断熱、および最後の状態などを専門の方に見ていただきたく思います。(略)上述の不安の内容を踏まえてどこまでご対応可能か、費用などをご相談したいです。 (愛知 K様)
この中で、やはり「不安」と書かれていたことが印象的でした(太字はN研にて強調)。
注文住宅の場合、設計事務所に設計と工事監理を依頼されるケースもありますが、住宅会社に設計と工事を発注されて、上の方のように、工事の各段階での検査を依頼されるケースもあります。
分譲・建売の場合でも、早めに契約された場合は、先ほどの例のように、できれば上棟時検査(躯体検査)と竣工検査(内覧会)のふたつ以上を行われると良いのではないでしょうか。竣工前の漠然とした不安の軽減にお役立てできると思います。
それから、内覧会をご依頼いただくお客様の本音として、上記のような「不安」が潜む一方で、売り手の住宅会社との関係をこの先も良好に維持してゆきたいという思いは皆様お持ちです。たとえば・・・
内覧会では、あまりピリピリした雰囲気にしたくありません。せっかくの新築なので楽しみながら、言うべきところは言うという風にしたいです。 (都内 M様)
こうした思いは大切にして内覧会に臨みます(太字はN研にて強調)。
実はいろいろ、戸建て内覧会の進め方
さて、特に戸建住宅の場合は、内覧会と言っても、売り手、住宅を提供する側によって、実際の進め方は様々なように感じます。
「内覧会は説明会」と捉えて、住宅機器の取扱い説明やメンテナンス方法の説明に重きを置いて、内覧会指摘シートなどを用意していない会社も少なくありません。
また、住宅診断(竣工検査)と内覧会(取説会的内覧会)を分けて、別の日に行なったり、午前と午後に別々に行うというケースもあります。内覧会に施工の担当者が出席せずに、営業マンだけで対応する会社もあります。その場合、指摘事項に対する是正方法やその完了予定日などは、指摘内容によっては後日回答となったりします。
「内覧会当日の進め方を聞いておくと良いですよ」とお客様にはあらかじめ申し上げるのですが、特に進め方は決まっていないというような返事だったりすることもあります。たとえば、つぎのようなお返事がありました(太字はN研強調)。
当日は設備・機器類の説明後にキズ等の確認をするそうですが、進め方の項目等はないそうです。個々の現場状況に応じて行っているとのことです。 (都内 H様)
時には、「点検口などは一般の人が使うものではありません、と言われました」などというケースもありました。内覧会は説明会主体と考えているのでしょうね。たとえば、浴室ユニットバスのエプロンについて・・・
一般的にUBエプロンや点検口は、住み手が開けることがないので説明はしていないそうです。要望があればしますということのようです。(同)
とのことでした(太線はN研強調)。一方、ある会社は、担当者がその場で外してくれました。どうぞご覧下さい、というわけですね。
ユニットバスのタイプにもよりますが、このケースでは、断熱浴槽でしかも基礎断熱としていることが確認できました。これは一例ですが、売り手側の協力的な姿勢で、この内覧会はスムースに進みました。
こうした売り手側の姿勢は、その会社ごとのスタイルですので、どれが良いとは言えません。
まとめ:内覧会について
では、今回のまとめです。
①新築住宅の内覧会(竣工検査)にインスペクション(住宅診断)を依頼する方は増えてきています。一方、プロによる内覧会同行は必要ない、無駄だ、と考える方も確かにいます。しかし、はじめての経験で戸惑ってしまう、とか、売り手との長い関係から、言いにくい、という買い手側を、サポートする存在は無駄ではないのではないでしょうか。
②内覧会同行を依頼される方の多くは、ご自身に住宅の専門知識が少ないこと、あるいは身近に内覧会に一緒に行くことを頼めそうな人がいないなどの理由からです。そして、住宅という高価な買い物を引き取るにあたって、本当にこの住宅はちゃんとしていて、引渡しを受けてよいのかという漠然とした不安を抱えている方も少なくありません。
③分譲住宅や建売住宅でも、早めに契約できた場合は、竣工時の内覧会の他、それに先立つ住宅検査を少なくともひとつ以上行うと、不安が軽減できます。たとえば、上棟時検査(躯体検査)と内覧会(竣工検査)などのように。また、これらの検査では、売り手とお客様の今後の関係を悪化させるようなことは避けるべきであり、同行者は場の空気を読みつつ相手と折り合いをつけるというスタンスも必要でしょう。
④内覧会とひとくちに言っても、主催する売り手の認識や進め方は多様です。取扱い説明と指摘された汚れやキズの是正、くらいに捉えている会社が多いです。しかし、竣工までに検査を行っていない住宅では、少なくともすべての点検口を開けて、内部を確認すべきです。時には、きれいに仕上がった住宅でも、その壁や床の向こうの本来「見えないところ」に問題が見つかる場合もありますから。
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