ここまで、第一部「内覧会、静寂の床下をゆく ~ 新築の床下(その1)」、そして、第二部「内覧会、見えない『基礎』の基礎的知識 ~ 新築の床下(その2)」として、主に新築戸建て住宅の床下、そして基礎の話題を取り上げてきました。
今回はいわば第三部となるわけですが、ここでは既存(中古)住宅の床下の話題を取り上げてみましょう。
念のため、タイトルの「見えない」とは、一般のお客様にとって「見えないところ」です。
一般の方が敢えて覗いてみることがないところ、その代表みたいな「床下」のことです。
目次
はじめに(ある「お問い合わせ」から)
新築引渡しを受けて、新居に住みはじめてみると、いろいろなお話やご感想が出てきます。
快適です、やはり新築はいいですね・・・というようなご感想なら、ひとまずご安心、ということでしょうけれど、しかし、
・・・今は内覧時にホームインスペクションしてもらえばよかったと後悔しています。(原文メール、太字化N研)
となると、穏やかではありませんね。これは、実際に、私たちN研(中尾建築研究室)にいただいた、ご相談のメールのごく一部です。
この文の前に・・・
・・新築直後なのに家が寒いので、(ご自分で)調べてみたら、断熱材がずれているのを見つけました。(原文メール、太字化、カッコ内補足N研)
そして、その他各所についても、
施工があまりにも酷く(略)、全ての作業の質を家族含め疑っています。(原文メール、太字化N研)
もちろん、内覧会時点の診断のみで、この方の言われるご不満に関する指摘がすべてできた・・・などとは言いませんが、たとえば床下の「断熱材がずれて」いるといったものは、内覧会時の床下調査で見つかる可能性が高いです。これは、第一部でご紹介した、よくある不具合事例に類する内容です。
・・・ところで、このようにすでに入居してしまった「住宅」は、どんなに新しくても、用語の定義だけで言うと、もうすでに「中古住宅」ということになります。
「中古」の床下、と言っても
そもそも、「既存(中古)住宅」と、ひとくちに言いますが、この「中古」の範囲はとても広いです。
以前、このコラムで書きましたが、
と、いうことで、「新築は中古の始まり」というくらい、中古の範囲は広いです。
今回の「床下」に限っても、新築に比べて、「中古の床下」はその古さの違いによって、その雰囲気はかなり様々です。
床下がコンクリートの場合
床下がコンクリートの場合、たとえば、ベタ基礎であれば、すべてこれに該当しますね。
また、ベタ基礎でなく、布基礎でも、防湿のために床下がコンクリートとなっている場合もあります。
たとえば、次の写真でごらんください。
写真左は、診断当時築6年の三階建ての住宅の床下です。最近主流のベタ基礎ですね。1階床は、構造用合板で支えていて、土台と大引き(おおびき)でそれを受けています。断熱材がその間に入っています。根太(ねだ)はありません。大引きを支えるのは鋼製束、いずれも第一部の「新築内覧会」のところで見てきたものと同じです。
写真中は診断当時築20年、こちらもベタ基礎ですね。こちらは、土台と大引きの上に根太を乗せて、1階の床を支えています。その根太の間に断熱材が納まっています。
写真右は診断当時で築25年程度。こちらも、床下がコンクリートですが、木製の束(つか)をコンクリート製の束石で支えています。束は根搦(ねがらみ)で固定されています。上部に、1階の床を支える根太が見えます。こちらも、根太の間に断熱材が納まっています。
このように、床下がコンクリートとは言っても、築年数によって、床下の構成は微妙に異なることが分かります。
床下が土の場合
一方、床下が土の場合は、床下に入ってみると、コンクリートの場合とは雰囲気が違います。この場合は、多くは布基礎(ぬのきそ=後ほど図示します)で、基礎の立上がりの間が土になっています。
まず、写真左は、築22年程度。木製の束の下にコンクリート製の束石(つかいし)があり、束どうしを根搦で固定しています。この住宅の床下は土ですが、この土の部分をコンクリートで覆うと、先ほど紹介した築25年床下コンクリートの住宅のようになります。
この所有者様のお話では、以前は床下を機械換気していたけれど、ある時期からやめてしまったとのことでした。この床下には枯れた雑草が多く見られましたが、住宅横の駐車スペースをコンクリート舗装してから、床下の湿気がなくなりこの状態になったそうです。
写真中は築33年ですが、枠組壁工法(ツー・バイ・フォー)の住宅です。床下は、写真では土のように見えますが、防湿フィルムを敷いた上に「押え砂」を施してあります。
写真右は診断当時築43年、旧耐震基準の住宅でした。基礎は無筋コンクリートとのことでした。
【無筋コンクリート:住宅の基礎に鉄筋が入ったのは、意外と新しい】
住宅の基礎コンクリートに鉄筋が入っているのは、現在では当然のように思われるかもしれません。
しかし、1971(昭和46)年の建築基準法施行令の改正時には、木造住宅の基礎は「コンクリート造または鉄筋コンクリート造の布基礎とする」となっていて、必ずしも鉄筋が入っていなくても良かったようでした。
そして、1980(昭和55)年に住宅金融公庫(現在の住宅金融支援機構)の仕様に鉄筋コンクリート造の基礎が追加されて以降、徐々に一般化されたようです。
しかし、1981(昭和56)年の新耐震基準の制定後も、住宅の基礎については、具体的には設計者の判断に委ねられていました。
それが、2000(平成12)の建築基準法改正で、ようやく鉄筋コンクリート基礎が法的に明示されました。
なお、インスペクションでは、簡易的な鉄筋探査機を用いて、鉄筋の有無を判断することがあります。
【住宅のコンクリート基礎内の鉄筋の役割(無筋コンクリート基礎で大丈夫なのかという問題)】
鉄筋コンクリート基礎というのは、ご存じの方も多いと思いますが、コンクリートの内部に鉄筋が入っています。一方、無筋コンクリート基礎は、鉄筋が入っておらず、コンクリートだけで形成された基礎のことです。
コンクリートは、圧縮力(押しつぶそうとする力)に対して強力です。ですから、基礎の上に住宅が建っている平時であれば、建物の重さが基礎を押しつぶそうとしても、コンクリートがそれに抵抗するので、コンクリートだけの基礎で大丈夫です。
しかし、その住宅が地震や強風に襲われた時、住宅は引張力(引っ張ろうとする力)やせん断力(ずらすような力)を受けます。これらの力に対してはコンクリートはそれほど強くなく、鉄筋がそれに抵抗してくれます。
このように、鉄筋コンクリート基礎は、住宅に加わるいろいろな力(重さや地震力など)に対して、コンクリートと鉄筋のそれぞれの長所で抵抗してくれます。
既存(中古)戸建て住宅、床下のイメージ
中古戸建て、床下のイメージ
話を戻しまして、中古住宅とひとくちで言っても、「建築されて1年未満で、かつ人が住んだことがない」新築住宅以外はすべてを含んでしまうことになります。
そのため、その古さ、建てられた時期によって、床下も実にさまざまです。
そこを理解いただいた上で、代表的な「中古床下のイメージ」を図化すると次のような感じでしょうか。
たとえば、中古住宅では、基礎は布基礎が多いでしょうけれど、先ほどお話したように、少し古い住宅では鉄筋のない「無筋コンクリート」であることも少なくありません。
住宅外周の基礎には、ところどころに床下換気口が切り込まれたように設けられています。最近の新築では、この切り込みはなく、基礎上に通気パッキンを敷くので、基礎はすべて一定高さですが、中古の場合のこの切り込まれたような換気口は、その角の部分にクラック(ひび割れ)が見られることが多いです。
そして、床については、下の写真のように、土台や大引きの上に根太(ねだ)を並べて、その上に合板や杉の荒床が敷かれます。根太の間には、先ほどの写真で見たような断熱材が納まっていますが、古い戸建て住宅の場合、断熱材がないことも多いです。
大引きは木製の束で支えられ、束どうしは根搦(ねがらみ)で固定されます。
また、床の下は、先ほどご紹介したように、コンクリートの場合と土の場合とがあります。土の場合、防湿フィルムを敷いた上に「押え砂」が施されている場合もあります。
中古床下でよくある不具合について、いくつか
床下断熱材の外れ、欠如、欠損など
床下断熱材の不具合
まず、新築でもそうでしたが、1階床下の断熱材に関する不具合があります。
しかし、既存(中古)住宅の場合、断熱材の外れや落下という問題以前に、断熱材が施されていない部分があるというような例があります。
たとえば、物入れの下には断熱材がない、というように、断熱は主に居室の床下だけに行われていたりします。
これは、今日の断熱の考え方とはかけ離れていますが、実は、小屋裏(屋根裏)の断熱材の場合でも同様ですが、居間や寝室などの「居室」の床下や屋根裏だけを断熱して、押入れや物入れなどの「非居室」の床下や屋根裏には断熱材を入れないというようなケースです。
そして、さらに古い住宅になると、そもそも断熱材が設けられていないという例もあります。いわゆる無断熱の住宅です。
たとえば、和室の畳下の荒床を外すとそのまま床下の土が見える、といった具合です。
床下断熱材の変遷
ここでちょっとだけ、お話が横道にそれます。
木造住宅の場合、構造躯体(骨組み)の設計上の健全性については、1981(昭和56)年の新耐震基準に変更を加えた2000(平成12)年基準がひとつの目安になっています。
一方、断熱性能の場合は、1980(昭和55)年に旧省エネ基準ができた後、1999(平成11)年、2013(平成25)年と省エネ基準が改正され、その後も改正が行われてきました。
そこで、大雑把な区分けをしてしまうと、中古住宅をその古さで分ける場合、とりあえず2000(平成12)年より前に建てられた住宅は、躯体も断熱も、もともと手を加える(耐震改修、断熱改修をする)ことがまず前提になるだろうと考えて、その前提で住宅診断を受けるべきだと思います。
しかし、この頃の断熱性能の基準については、構造基準のような強制性はあまりなかったので、2000(平成12)年より後の住宅が、皆平成11年基準、平成25基準に従っているとは言えません。ですから、2000年より後なら、というのは構造には言えても、断熱については個別に調べなければなりません。
その前提の上で、床下の断熱材にお話を戻しますと、平成11年、平成25基準の省エネルギー等級4というのは、グラスウールボードの場合厚さ80㎜(高性能、24kの場合)程度となります。
これは、昭和55年基準(等級2に相当)の材厚の4倍程度になります。
先ほどの、中古住宅で、断熱材が設けられていない、無断熱の住宅のものというのも、まだかなりあります(昭和24年ころの調査で4割近く)。
そして、先ほどのような、居室の床下だけ断熱された中古住宅や、初期の基準に従った薄い材厚の断熱材の中古住宅となり、おそらく今世紀に入ってから今日のような材厚の中古住宅へと変遷してきているのではないでしょうか。
ですから、中古住宅では断熱材の落下とか一部欠損というような不具合にも、その対象となる断熱材の性能、ここでは材厚の違いにも注意する必要があり、そのことは当時の断熱の考え方がその背景にあります。
蟻害(シロアリ被害)に関連して
新築住宅では見られず、既存(中古)住宅ではしばしば問題になるのが、蟻害(シロアリの害)です。
なお、新築の場合は防蟻処理を行いますが、それと同時に将来のシロアリの進入リスクに対応しておく必要があります。第一部や第二部でお話したように、コンクリート基礎の打継部や水抜き穴の処理、あるいは木くずの床下残置などの問題は、竣工時点ではあまり問題にはなりませんが、将来のリスクという点で関心を持つべきです。
そして、中古住宅でも、古いものは床下点検口が設けられていない場合も多く、その場合は和室の畳をめくって、その下の荒床(あらゆか)が外れないか調べてみます。
次の写真は、そのようにして和室の床下に進入した例です。その住宅は、床を支える木製の束(つか)の一本が、かなりひどく蟻害を受けていました。
この例の住宅は、かなり古く、耐震診断の結果も良くなかったことから、耐震補強を含む全面リフォームとするか、それとも建て替えるか、依頼者様は迷われていましたが、この蟻害の状態を見て、リフォームを断念されました。
シロアリ被害や対策については、専門業者のサイトも数多くあるので、ご覧になられた方も多いかもしれません。注意したいのは、たとえば無料シロアリ診断などと称して床下に入り、木部蟻害ではなく、基礎の繊維補強を勧められた、などといったケース。中古住宅の場合、古いものは先ほどお話ししたように、全般的に基礎が無筋で、そこが弱点なのはほぼ分かっているわけで、進入調査はセールスのための口実だったのかも知れませんね。
もちろんシロアリ調査・対策の業者には専門的能力の高いところも少なくありません。ここでも玉石混交をどう見分けるか、ですね。
床下の雑草、防湿の問題、土上の配管など
中古住宅で床下が土の場合、雑草が茂っている場合もあります。
これは主に、床下の土中に水分がある場合なので、床下の湿気が問題となります。
床下の湿気対策としては、防湿シートを敷き、その上に押さえ砂を置くといった方法もありますが、昨今では、防湿用コンクリート(土間コンクリート)を打設するのが一般的です。
しかし、古い住宅の場合は、残念ながらそうした配慮がされず、土だけの場合も少なくありません。その土が水分を含んで雑草が茂ってしまう結果になるのでしょう。
また、床下の湿気は、床下の換気が充分かどうかにも関わってきます。
床下換気の状況は、床下換気口が確保されているか、換気口が塞がれていないかなどに注意しましょう。その際、換気口まわりの基礎立上りにクラック(ひび割れ)がないかも確認しておきましょう。
そして、水分計で木部の含水量を測定してみるとよいでしょう。
床下の木材の含水率は、20%を超えると、カビや腐朽菌が発生しやすくなります。12~18%に納まるのが望ましいと言えます。
また、床下が土の場合、配管類がその土の上に置かれていることがありますが、勾配を必要とする排水管などについては、固定が不足して勾配が充分確保されていないという問題もあります。
床下の断熱、湿気、気流止め、壁内結露などについて
住宅の「結露」は悩ましいものですが、特に結露が壁の内部で起きてしまう、いわゆる「内部結露(壁体内結露)」となると、直接見えないだけに発見が遅れ、柱や土台を腐らせてしまう原因ともなります。
現在では、住宅の断熱化の話題が取り上げられる場面では、同時に、この壁内結露の危険性が指摘されるようになりました。
しかし、かつては断熱化とは断熱材を厚くすることとだけ考えられていました。
そのため、十分な結露対策が取られずにグラスウールなどによる断熱化が進められたため、壁内で結露が生じて、グラスウールがその水を吸収し、木部を濡らして腐朽が進行することとなってしまいました。
これに関するような話題では、今でも必ずと言っていいほど引用されるのが、北海道で起きた「ナミダタケ事件」です。
日本の住宅に断熱材が使われるようになったのは、およそ1970年ころ。そして、二度のオイルショックをはさんで、1980(昭和55年)には、旧省エネ基準ができました。
ちょうどその頃、北海道で新築3~4年目の住宅の床下に大量のナミダタケ(木材腐朽菌の一種で、建物の湿った所に繁殖し、涙のように水滴を出すのでこう呼ばれる)が発生し、床が腐り落ちるという事例が頻発しました。
当時の住宅は、床下換気口が少ないため通風が悪く、さらに床下も土のままであったために、床下は湿気が多い状態でした。
この湿気を多く含んだ空気が壁体内に侵入し、グラスウール断熱材に吸収され、そこで結露が生じてしまいました。その結露が、まわりの木部を濡らし、腐朽菌であるナミダタケを繁殖させたというわけです。
当時はまだ、住宅に断熱材を入れ、それを厚くすることだけが、家の中を暖かくすることにつながると考えられていたため、住宅の壁の内部結露という問題には思い及ばなかったようです。
そして、この事件をきっかけに、住宅の断熱性能を高めるためには、断熱材を厚くすると同時に、防湿層や防風層・通気構造や気密性能などが大切であることに目が向けられるようになりました。
このように、床下や室内の湿気が結露し、その水分を断熱材が吸収して、それに接する木部を濡らし、やがて腐朽させてしまう、というナミダタケ事件からの教訓から、床下の防湿層、床下換気、気流止めなど、中古住宅の診断の際に、注意を向けるべきポイントを得ることができます。
中古の床下 ~ GL(地盤面)より低い1階について
私たちN研(中尾建築研究室)への「お問い合わせ」にいただいた、既存(中古)住宅のお話をひとつご紹介します。
中古住宅に関するお問い合わせでは多くそうであるように、最初、すぐにでも診断して欲しい、いつしてもらえますか、というところからやり取りが始まりました。
まずはお手元にある資料を拝見できますかとお返事を差し上げると、すぐ広告の平面図と、次のような断面図(差し支えがあるといけないので、こちらで書き直したものです)が届きました。
都市部に建つ木造3階建ての中古住宅で、築20年ほどの住宅でした。
いただいた資料から想定されるポイントをお返事しましたが、その中で気になったのが、1階の床のレベルが敷地のGL(まわりの地盤)より低いことでした。
そして、1階の床からベタ基礎の底盤まで20センチほどで、水回りの配管を納めるのに精一杯で、床下がほとんど確保されていないようでした。
もちろん、次の図に示すように、基礎まわりの防水や断熱、床下の換気などがしっかり処理されていれば良いのですが、ここはしっかり確認すべきですね、と申し上げました。
そして具体的には、床下点検口が設けられていなくても、1階の洗面室の洗面化粧台の下に点検パネルがあるでしょうから、それを外して床下を覗いてみましょう、場合によっては内視鏡で覗いてみましょう、などというお話になりました。
新築のところでもこれに類する事例を紹介しましたが、基礎立上り外部の防水、打継ぎ部の処理が気になるところです。また、基礎のコンクリート立上り部分が室内に接しているので、この室内側の断熱処理が不十分な場合、結露などの恐れがあります。
都市部の敷地なので、高さ制限などのために、どうしても1階を少しGLより低く設定せざるを得なかったための断面設定だとは思います。
中古の床下(第三部のおわりに)
それでは、今回第三部のまとめです。
中古の床下は、新築の床下とはまた違った様相を呈します。
①「中古の床下」と言っても、既存(中古)住宅の範囲は広いので、なかなか一括りには言えませんが、新築と中古の大きな違いは、お分かりのように、「劣化(事象)の有無」にあります。
②床下に限らず、新築診断では劣化は生じていませんが、眼前の不具合の指摘だけでなく、将来劣化が生じるかもしれないリスクの部分もコメントすることはあります。新築内覧会主催の側からすれば、カチンとくるところかもしれませんけれど。
③中古の診断では、たとえば腐朽蟻害のような、劣化の指摘がむしろ主になることが多いですが、早めの補修が望ましい劣化なのか、要経過観察的な劣化なのか、その他の程度なのか、と言った参考コメントを添えることが多いです。もちろん中古とて、劣化の指摘ばかりではなく、たとえば断熱材の落下といったような不具合にも言及します。その中には、もともと不具合のリスクを抱えていたものが、現実となって進行したというものもあるでしょう。
④中古の範囲は広いのですが、まずはその住宅が建てられた「古さ」がポイントになるでしょう。その中でも、耐震性能と断熱性能に関わるものが大きいです。具体的な「古さ」として、とても大まかですが、今世紀(2000年以降)に建てられたものか、それ以前のものなのかを事前に知っておくこと。それによって、まずは耐震性の設計上の判断ですね。一方、断熱については、耐震基準のような一律の適用ではなかったので、個別に観察する必要がありますが、前世紀(2000年より前)に建てられた住宅には、断熱的にはあまり期待できないものが多いと言えるでしょう(もちろん例外もあります)。
⑤中古の基礎については、基礎コンクリートの中に鉄筋が入った、鉄筋コンクリートの基礎が完全に採用されるように至ったのは、意外にも今世紀になってからでした。それ以前の基礎は、コンクリートに鉄筋を入れるかどうかは、設計者の考え方によっていました。つまり、無筋の基礎というのもまだまだ多く残っているということです。
⑥中古の床下、それを、「床下が土のまま」と、「床下がコンクリート」に分けてみることもできます。「床下が土のまま」の場合、床下換気の状況と相まって、湿気の問題が考えられます。それは、先ほども触れましたが、腐朽蟻害の原因でもあります。本文でご紹介したナミダタケ事件もその中にあります。「壁内結露」の問題は、皮肉なことに、壁内の断熱材をどんどん厚くする過程で生じました。
⑦また、「床下がコンクリート」の場合でも、中古住宅では特に、床下から1階の壁内部への空気の流入の問題があります。これは、「床下が土」でも「コンクリート」でも関係なく、いわゆる気流止めの措置の有無の問題です。
⑧さらに、特殊な例として、1階の床面のレベルが、周囲の地盤レベル(GL)より低いような場合は、基礎外部の防水と、室内側の断熱がポイントになるので、中古住宅では、基礎内側の壁面の状況(結露跡、水染みやカビなど)確認が重要です。
冒頭の、入居して不満・不信感を抱かれたご相談者様ですが、まだ「ほぼ新築」であり、引渡し直後なので売主にも話ができる状況にあることと、ここで話されたご不満、ご不安事項を、ご自身で具体的なリストにまとめていたので、まずはそれを直接話してみることにします、ということになりました。
当事務所と話されたことで、ご自分の中で問題点が整理され、少し冷静に、客観的になられたのでしょう。
・・・では、売主側に主張するようします。(原文メール)
こうしたかたちで、まずはこのやりとりのメールを終えられ、次のステップに進まれました。
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