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見えているのに「見えないところ」~ 今回は、住宅の外壁について

住宅の外壁について

「見えないところ」~ 今回は住宅の外壁について考えます

 

前回は、住宅の小屋裏(屋根裏)についてのお話でした。

小屋裏」というのは、一般の方はまず入ってみないところで、私たちN研(中尾建築研究室)がよく言う「見えないところ」ですね。

私たちのお客様にとっての見えないところ」です。

こうした小屋裏のように、まず「入らない」「覗かない」ところの他に、見えているのに見えない」つまり「気付かない」というようなところもあります。

当たり前のように見えているのに、意外と気付いていないところ、です。

そんなところにも眼を向けてみましょう。

それもまた、私たちが言うところの「見えないところ』を診る」ことですから。

N研-中尾-
今回は、いつも見ているのに、意外と気付いていない「外壁」についてのお話です。今回も視覚重視で構成しましたので、お急ぎの方は、図と写真をざっとご覧いただき、「まとめ」に飛んでいただいても結構ですよ。

 

画面から眼を上げて、まずは街歩き ~ 外壁のリアルに触れましょう

戸建住宅の外壁

最近では、着工前の段階でも、住宅の完成イメージをかなりリアルに見られるようになってきました。

CG(コンピュータグラフィックス)で作成された3D(3次元)モデルを使って、VR(仮想現実)が作られるようになり、VRは、今や住宅会社では、強力な営業ツールになりつつあるようです。

住宅の外壁について

CGによる、住宅の完成イメージはずいぶんリアルになってきましたね

 

住まいの外観を考えるのに、そうしたヴァーチャルなイメージは、とても助けになるでしょうけれど、たとえば外壁の素材の質感といったものは、まだ表わし切れていないように感じませんか。

やはり、街に出て現物見比べるべきでしょう。

また、気に入った外壁材でも、それが年月を経るとどうなるか、これは実物でぜひ確認しておくべきですね。

住宅の外壁について

住宅の外壁に使われる材料は、やはりCGよりも現物を見て歩くほうが良いでしょう

 

さて今回は、その外壁材についてです。

戸建住宅の外壁材は、まず大きく「乾式」と「湿式」に分かれます。

大ざっぱに言うと、「乾式」は工場で成型された外壁材を現場で取り付けてゆく工法、「湿式」は現場で塗ったり、貼ったりして仕上げてゆく工法、と言えます。

一般的な外壁材には、サイディング、モルタル塗壁、ALC、タイル、といったものがあります。これを、乾式湿式に分けてみると、

乾式(工場で成型):サイディング(窯業系、金属系、樹脂系、木質系)、ALC(軽量のコンクリートパネル)

湿式(現場仕上げ):モルタル・塗壁(リシン、スタッコ、吹付けタイル、ジョリパットなど左官仕上げなど)、タイル(乾式工法もあり)

などと分類されたりします。

窯業系のサイディングは工場で塗装まで済ませた製品を現場で組み立てる、というのが一般的ですが、最近では、たとえばジョリパット(商品名)仕上げの下地として、無塗装のサイディングを目地処理して一体化し、大壁のように使われたりもします。こうなると表面仕上げだけでは、下地がモルタルなのかサイディングなのか見分けられませんね。

 

住宅の外壁について

住宅の外壁例、(左上)サイディング、(右上)モルタル塗壁、(左下)ALC、(右下)タイル

 

最近では、工場生産された製品を現場で取り付けてゆく乾式工法が主流ですが、意匠性の高い湿式の塗壁も好まれます。

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意匠性の高い塗壁は、手間がかかる仕上げですが、それだけに根強い人気があります

 

外壁材の主流、サイディング

サイディングは、戸建住宅の外壁材では最も多く使われています。

その種類は、窯業系、金属系、樹脂系、木質系の四種類ですが、窯業系のシェアが圧倒的です。

窯業系サイディングは、セメントと木質繊維が主原料で、防火性能が高く、施工が容易という利点がありますが、その歴史は比較的新しいです。

日本では、1980年代頃まではモルタル塗壁が住宅外壁の主流でしたが、施工性の良さやデザインの豊富さなどから、窯業系サイディングに取って代わられてきました。一説では、最近の住宅用外壁材のうち、窯業系サイディングが占める割合は、8割とも言われています。

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窯業系サイディングは戸建住宅の外壁の主流となっています(写真はイメージ)

 

窯業系サイディングの「最小厚さ」

さて、その窯業系サイディング(以下サイディングと略記します)の製品厚さのお話です。

サイディング」という言葉は、戸建住宅を購入あるいは建てようとする方の多くは、ご存じでしょう。

パンフレットや図面のどこかに、「外壁:サイディング」などと書かれているでしょうから。

その時、そのサイディングの厚さに注意してみてください。

以下、私たちが内覧会で拝見した図面・仕様書のうち、記載方法もそのままに、いくつか引用してみましょう。

・建売A(仕書書)

 外壁 構造用合板9㎜ + 通気金物工法15㎜ + サイディング15㎜

・建売B(矩計図)

 外壁 窯業系サイディングア)14、 縦胴縁(ア)15(※通気層)、(以下略)    

・建売C(概要書)

 外壁 サイディング貼 厚14以上

・建売D(矩計図)/ (仕様書)

 外壁 窯業系サイディング、外壁通気層構造(通気層15㎜)、(商品名略)M14[釘施工]

・建売E(矩計図)

 外壁 外壁通気工法 窯業系サイディングt-16、縦胴縁15×45(製材)(以下略)

・注文F(矩計図)

 外壁 外壁通気工法 窯業系サイディング(ア)16、QF045BE-9226、通気胴縁(以下略)

会社各様の記載方法ですが、サイディングの厚さに着目すると、Aは15㎜、B~Dは14㎜、E、Fは16㎜です。

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外壁サイディング、でもその厚さは「見えないところ」ですね(写真はイメージ)

 

ネットでご存じかも知れませんが、現在では、窯業系サイディングの厚みは14㎜以上です。

以前サイディングといえば厚さ12㎜が主流でした。しかし、JIS規格が改定されて、最小厚さが14㎜に引き上げられたためです。

2008年、住生活基本法に基づき、窯業系サイディングの日本工業規格(JIS A 5422)が改定され、最低厚さが14㎜に引き上げられました。それまでは出荷の過半を占めていた12㎜厚製品は、以後、JIS規格外となりました。

ですから、外壁がサイディングの既存(中古)住宅では、12㎜のものも見られます。建てられた当時はむしろ一般的だったからですね。

 

そのサイディング外壁、「厚さ」ご存じですか? ~ 見えない「1ミリ」で変わること

サイディングの厚さと留め付け方法 ~ 釘留めと金具留め、微妙な「1㎜の差」

サイディングを壁面に取り付ける方法は、①釘で固定する(胴縁に釘で留める)方法と、②金具で固定する(専用の金具に引っ掛ける)方法のふたつがあります。

このふたつの取付け方法は、サイディングの厚さによって変わってきます。

ちょっと面白いのですが、厚さ14㎜以下のサイディングは釘留めで、15㎜以上金具留めという目安があります。(サイディング会社によっては、14㎜の上の製品厚さは16㎜というところもあります)

釘で固定する(胴縁に釘で留める)方法

まず、この方法の概要を図で示してみます。

はじめての方には、ちょっと分かりにくいかも知れませんが、左から、正面図、断面詳細、立体図です。

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サイディングの「釘留め」工法の概要、(左上)正面、(中)断面詳細、(右)立体図、(社)日本窯業外装材協会「窯業系サイディングと標準施工(第4版)および、ニチハ(株)「モエン標準施工編2023年版」より図を引用、N研加筆、写真はN研

 

はじめて聞かれる方は、セメントと木質繊維でできている窯業系サイディングのパネルを「釘打ちで留める」と言われると、割れてしまうのではないかと思われるかも知れませんね。

そこで、サイディングを釘で外壁に留めていく場合、割れないように一定のルールがあります。

ひとつは、「厚さの制限厚いパネルには釘を使わない、ということです。

むかし12㎜厚さのサイディングパネルが規格品だった頃は、留め付けは普通に釘固定でした。そして、現在の14㎜厚さのサイディングも釘固定

厚さ15㎜を超えると(メーカーによっては16㎜厚製品以上)、直接釘を打ち付けるのではなく、必ず先孔をあけてから釘を打つように(しかしそれでも、できれば釘固定は避け金具固定を推奨)などど、メーカーの施工要領書などには注意書きがあります。

もうひとつは、パネルの隅に釘を打つ場合、板端からの離れに制限があることです。

一般には、20~35㎜の範囲とされています。(メーカーにより多少異なるので、詳しくは各社のカタログを参照してください)

参考までに図示してみると、次のようになります。

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サイディングを釘留めする場合、釘打ちの位置には制約があります。(社)日本窯業外装材協会「窯業系サイディングと標準施工(第4版)および、ニチハ(株)「モエン標準施工編2023年版」より図を引用、N研加筆、写真はN研

 

窯業系サイディングの「釘打ちの端あき寸法不足によるクラック」を防ぐためは、各サイディングメーカーの標準施工仕様(例:専用釘、下地組み、先孔施工、ほか)を守ること、特に、端あき寸法を守ることが大切です。

国土技術政策総合研究所(国総研資料第975号)木造住宅の耐久性向上に関わる建物外皮の構造・仕様とその評価に関する研究「第Ⅸ章 木造住宅外皮の設計施工に起因する不具合事例集」より

 

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以上、釘留め工法でした。次は、金具留め工法です。

 

金具で固定する(専用の金具に引っ掛ける)方法

サイディングパネルを「金具に引っ掛ける」と言われても、金具は壁の内側の見えないところにあるので、なかなかイメージしづらいと思います。

では、図と写真で示してみます。(サイディングを横張りする場合を示します)

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サイディングの「金具留め」工法の概要、(左上)停付け金具、(中)断面詳細、(右)立体図、(社)日本窯業外装材協会「窯業系サイディングと標準施工(第4版)および、ニチハ(株)「モエン標準施工編2023年版」より図を引用、N研加筆、写真はN研

 

サイディングの上と下の端を「留付け金具」の「ツメ」の部分で引っ掛けます。

図の断面でお分かりのように、(横張の場合の)上と下の端は、相互に噛み合うようになっていて(「あいじゃくり」と言います)、さらに金具を引っ掛けられるように加工されています。

こうした加工をする必要があるので、金具固定をするにはある程度パネルの厚さ」が必要なわけです。

その厚さの限界が15㎜というわけです。

この「限界」の本当の事情はわかりませんが、14㎜厚のパネルを金具留めとするには「強度的に問題があるので」と否定されます。一方、釘固定15㎜厚以上は先述のように「お勧めしません」などとカタログなどにはあります。

金具留め工法のサイディングの厚さは15㎜以上とする。(日本窯業外装材協会 窯業系サイディングと標準施工(第4版)2022.07より)

 

金具留め工法は、釘留めに比べて、地震などの揺れに対する追従性があり、サイディング材自体の伸縮にも対応しやすいという優位性があります。

先ほどの図示でお分かりのように、「金具による留め付け」とは、たとえば横張りサイディングの場合で言えば、下のパネルの端部金具の下向きのツメで引っ掛けて押え、その金具をビス留めして、金具の上向きのツメのところに上のパネルの端部を引っ掛けるようにして載せる、という手順を繰り返します。

この時、留め金具自体が傾いたりすることない状態で、しっかりビス留めされている必要があります。

そして、わずかなツメのところでパネルを引き寄せ固定する、特異な形状の金具なので、留め付け金具はいわゆるメーカー純正品を採用することが望ましいです。

安価という理由だけで、非純正品を使用するのは避けるべきでしょう。パネル端部の形状とツメの形状が一致せずに、施工後ガタつきがあったり、スキ間が生じることもあり得るからです。

留め付け金具は協力会社の純正品を使用する。(日本窯業外装材協会 窯業系サイディングと標準施工(第4版)2022.07より)

 

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1㎜の違いで釘留めと感具留め、お分かりいただけましたか。

 

「1㎜の厚さ」の違いで、取付け工法が変わる

繰り返しになりますが、現在では12㎜厚のものはないので、14㎜厚のサイディングだけが釘固定、それ以上は原則金具固定ということになります。

わずか1㎜の厚さの違いで、取付け工法が変わる」という微妙な話。

それは、強度上の問題も確かにあるのでしょうけれど、それよりも金具留め工法は金具にコストがかかってしまうという、予算上の問題が大きいのでしょう。

そこで、釘留めの普及品として、14㎜厚のサイディングが使われている、ということなのでしょう。

N研-中尾-
見えない1㎜、されど、取付け方法コストに影響する大きな1㎜、というわけですね。

 

1㎜の差 ~ ふたつの工法比較まとめ

ではここで、釘留めと金具留め、2つの工法の比較をまとめておきましょう。

  釘留め工法 金具留め工法
取付け方法 サイディングボードに釘を直接打ち付けて取付ける(釘頭は着色補修) サイディングボードを専用の金具に引っ掛けて取付ける(金具は見えない)
通気構造(通気スペースの確保) 釘を留付ける胴縁の厚さが通気部分となる(通気をせき止めてしまう箇所は胴縁を一部カットする) ①専用金具を胴縁に固定し、胴縁部分の厚みで通気を確保する方法と、②胴縁を使わず、金具自体で通気用の厚さを確保する方法(通気金具留め工法)
コスト(初期費用) 釘留め可能なサイディングは、現在では厚さ14㎜に限られ、金具類を使わないので、初期費用は低く押えられる(普及品としてのコスト) 厚さが15㎜(メーカーによっては16㎜)以上必要な工法で、専用金具が必要になるので、初期費用は高くなる
パネルの固定、建物の揺れやパネルの伸縮への対応 釘で直接固定するので、地震などによる揺れに追随しにくい。また、ボード自体の乾燥収縮や日射などによる膨張が起きた際、伸縮できず、反りなどの原因になり得る。ひび割れ発生のリスクは金具固定よりも高い。 パネルは金具で引っ掛けるので、「逃げ」があり、揺れに対して追随しやすい。また、パネルの収縮や膨張による動きにも対応しやすい。
外観 釘頭は竣工時点では着色補修されるので、目立ちにくい。しかし、釘打ちの箇所数は膨大で、すべてが丁寧に打たれるとは限らない。また、経年により、次第に目立つようになる場合もある。 金具は表面からは見えないので、パネルの表面のみの外観が保たれる。また、製品厚さが増すほど、表面に立体的な模様が可能となるので、コストはかかるが見栄えは良くなる。
防水性 サイディング表面は塗装されているので当初は防水が期待できる。しかし、経年により、釘穴やひび割れ部からの雨水浸入のおそれがある。(裏側に透湿防水シートを貼るので、進入した雨水は遮断されるが、この二次防水に期待し過ぎるのは危険) 釘穴がないこと、ひび割れのリスクが比較的低いことなど、雨水の浸入のリスクは釘固定の場合より低い。(ただし、釘固定、金具固定いずれの場合も、サイディング表面やシーリング材の所定のメンテナンスは必要)

 

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厚さ1ミリの違いで取付け工法が変わるという、ちょっと不思議なサイディングという外壁材(写真はイメージ)

 

「見えない」厚さ ~ しかし、釘が見えたら厚さも見える

留め釘をめぐって~「見えない」ようで見えてしまう釘、そしてサイディング厚さ

先ほど図面・仕様書からの引用のところで見たように、建売住宅では、外壁にサイディングを採用する場合、14㎜厚を使っているところと、15㎜(または16㎜を使っているところがあります。

建売では、価格外観デザイン両方を考えるでしょうから、コストに有利14㎜厚とするか、デザインで有利15㎜(または16㎜厚以上とするか、その会社の販売戦略で決まるのでしょうね。

14㎜厚のサイディング外壁釘留めになりますが、釘頭を外壁の色に合わせて着色補修してあるので、遠目にはほとんど釘には気付きません。

竣工時の内覧会でも、こちらからお話ししないと気付かない方も多いです。

そこから先が依頼者様によって異なるのですが、釘のことはあまり気にされない依頼者様と、話を聞かれるとかなり気にされる依頼者様に分かれます。

次の写真は、14㎜厚さのサイディングを普通に見たところ(左)と、かなり近づいて見たところ(右)です。

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竣工時点では、14㎜厚の釘頭は、遠目にはあまり気が付きません

 

いかがでしょうか、気になりますか、それほどでもありませんか?

では、少し意地悪に、もっと釘まわりを拡大してみましょうか。

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気になる釘頭 ~ ぐっと外壁に近づくと釘頭が目に入りますね

 

サイディングを横張する場合の製品で、上下の幅が455㎜というものがあります。

この場合、このパネル一枚について縦方向に釘3本、横方向は胴縁(どうぶち)の間隔が500㎜以内で、そこに3本づつ釘を打ちます。

ですから、釘固定をするサイディング(一般には14㎜厚製品)では、あまり気が付きませんが、表面にかなりの釘が打たれていることになります。

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サイディング釘留めの釘打ち位置(横張の場合)、意外と本数が多く必要なことが分かります

 

特に、パネルを縦・横につなぐ部分では、図のように、近いところに4本打つことになります。

たとえば、次の写真は、ある内覧会にお邪魔した時のサイディング外壁の様子です。

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あるサイディング外壁の例

 

これだけでは、タイル模様のサイディング外壁で、シーリングのタテ目地しか分かりませんが、近づいて見ると留め釘が4本打たれていることが分かります。さらに良く見ると、ヨコ目地が一本の線として何とか判別できます。

つまり、ここは4枚のパネルの交点でした。

住宅の外壁について

4枚のサイディングパネルの交点、外観(左)と断面(右)

 

サイディング外壁を見た時(一般部の場合)

釘の頭が見えたら、そのサイディングは14㎜厚の製品(中古住宅の場合は12㎜厚の可能性もあり)

・近づいても釘の頭らしきものがなければ15㎜厚以上の製品で、金具留め

ということになります。(ただし、15㎜以上でも、部分的に金具の使用が困難なところだけは、釘留めとなることはあります)

「見えない厚さ」が、表面から推測できるというわけです。

 

釘留めのリスク

釘留めのリスクとして、釘頭が見えるという外観上の問題よりも、釘の打ち付け位置によっては、将来パネルの「割れ」や「ひび」の懸念が、あります。

写真はかなり古い住宅のもので、厚みが12㎜のころのものですが、シールの劣化とともに、「割れ」や「ひび」が見られた例です。

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既存(中古)住宅の古いサイディングに見られた、「割れ」や「ひび」そしてシール劣化

 

N研-中尾-
新築住宅で、14㎜厚の外壁では、釘がルール通りに打たれていることを確認しておきたいですね。
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留め釘の端あき寸法はルールどおりですか

 

今回のまとめ

では、今回のまとめです。

①戸建住宅の外壁材の主なものには、サイディング、モルタル塗壁、ALC、タイルなどがある。このうち、サイディングALC工場で成型されたものを現場で取付ける「乾式」、モルタル塗壁タイル(乾式もあり)は現場で仕上げてゆく「湿式」とに分けられる。

②最近では、工場生産された製品を現場で取り付けてゆく乾式工法が主流で、中でもサイディングは戸建の外壁の多くで採用されている。サイディングには、窯業系、金属系、樹脂系、木質系の4種類があり、そのうち窯業系サイディングが圧倒的に多く使われている。

窯業系サイディングを住宅の外壁に取付ける方法には、釘留め工法金具留め工法のふたつがある。このふたつは、サイディングボードの厚さの違いで使い分けられる。釘留め工法はサイディングの厚さが14㎜以下の場合に用いられ、金具留め工法は厚さ15㎜以上のものに用いられる。

④JIS規格に定められたサイディングの最低厚さは現在では14㎜で、これは2008年のJIS規格の改定で引き上げられた寸法だった。それ以前は12㎜厚のものも規格品で、当時はこの12㎜厚品が普及品だった、そのため、既存(中古)住宅の外壁では、12㎜厚のものも多い。

⑤現在は、14㎜厚のものだけが釘留め工法で、初期コストが優位なため、いわばこれが普及品となっている。それ以上の15㎜ないし16㎜以上の厚みとなると、ほとんど金具留め工法となり、その厚みによって立体的な模様が可能となり、デザイン的なバリエーションが豊富で好まれるが、初期コストは高くなる。

釘留め工法のサイディングは、留め釘によって外壁の胴縁に固定されてしまうので、建物の揺れや材料自体の伸縮に追随しにくいという欠点がある。12㎜厚品よりは強度は増してはいるが、この欠点によって「割れ」や「ひび」のおそれはある。そのため、14㎜品でも、留め付け釘打ち付け位置のルールに従う必要がある。

金具留め工法では、留め付け金具の安全性が重要なので、ガタ付きやスキ間が生じないようメーカー純正品を使用することが望ましく、取り付け時には金具の傾きなどがないように確実に取付ける

サイディングの見えない厚さ」~ 新築内覧会などで、サイディング表面にわずかな釘頭が見えれば14㎜厚、見当たらなければ15㎜厚以上、であることが「見える」。

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サイディング外壁の釘の有無、見つける方も、気にされる方もあまりいらっしゃいませんが・・・

 

今回のお話は、一般の方からすると、ちょっと縁遠い内容に感じられたかも知れませんね。

実際、内覧会でサイディング外壁の釘頭を気にされる方、釘に気付かれる方は、あまりいらっしゃいません。

しかも、たとえば釘の留め付け位置が規定より端に寄りすぎていたとしても、内覧会の段階ではまず是正のしようがありません。

N研-中尾-
しかし、もし将来パネルに「割れ」や「ひび」が生じたらとしたら、と考えてみたら、いかがでしょうか。たとえば、その原因が、妥当な端あき寸法から外れるものであったら・・・

 

 

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