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家の傾き・マンションの傾き(後編)~ それ、気付いていますか?許せますか?

家の傾き・マンションの傾き

前回に引き続き、家・マンションの傾きのお話です。今回は傾きの目安や測定道具をご紹介します。

1.家・マンションの傾き・・・新築と中古、それぞれの「傾き」事情

 

N研-中尾-
今回は「家の傾き・マンションの傾きの続きです。まずは、前回のおさらいを兼ねたお話から始めましょう。

 

参考家の傾き・マンションの傾き(前編)~ それ、気付いていますか?許せますか?

気付かないくらいのものから違和感を覚えるものまで、今回は床や壁の傾きについてのお話です 目次1 1.家・マンションの傾き・・・それ、気付いていますか?2 2.家・マンションの傾き・・・それ、許せますか ...

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まず、家・マンションの傾きの許容範囲は、新築・築浅住宅で3/1,000中古住宅(既存住宅)で6/1,000を目安とすることが一般的で、3メートル以上離れた2点で、壁や柱2メートル以上離れた上下2点で、それぞれ測定する、というお話でしたね。

ただし、住宅診断(インスペクション)では、局所的な傾きを問題にすることもある、というお話もありました。

 

新築・築浅の家、その傾きの事情

 

新築の場合

最近の新築住宅で、2000(平成12)年以降のものは、事実上地盤調査を行うことが義務づけられています。

その結果により、必要に応じて、写真のような地盤改良などを行った上で、基礎の工事を行います。基礎の天端(てんば=上の面)の水平精度が、その後の土台や床の水平さを決定づけるので、レベラー(セルフレベリング)と呼ばれる流動性のある材料を流し込んで精度を確保します。

 

家の傾き・マンションの傾き

(左)地盤改良(柱状改良)、(中)基礎立上がり天端のレベリング、(右)基礎の出来上がり状況

そして、この基礎の上に土台を据えて、柱、梁を組み上げて、棟上げとなります。この工程を建方(たてかた)と呼びますが、この過程で建て入れ直し歪み直しを行い、柱が鉛直になるよう調整します。

この建方精度について、ちょっと専門的なお話になりますが、「公共建築木造工事標準仕様書」という基準には、次のような記述があります。

建入れ直し後の建方精度の許容値は、特記による。特記がなければ、垂直、水平の誤差の範囲を1/1,000以下とする。(国土交通省大臣官房官庁営繕部:公共建築木造工事標準仕様書)

公共工事用の仕様書の要求ですから、民間の住宅にそのまま適用されるものではありませんが、この1/1,000という数値を建方の目安とすると、最近の民間住宅でも、上記の手順を守っているものであれば、多くは、躯体(骨組み)については、3/1,000の範囲に収まっていることが期待できますね。

 

家の傾き・マンションの傾き

(左)土台・大引・床張り、(中)建て入れ直し(下げ振り棒)、(右)建方完了の段階

 

こうしたことから、新築住宅の診断(インスペクション)で傾斜測定を行う場合は、本来の測定の趣旨である躯体(骨組み)の精度確認のためと言うより、仕上げ精度の確認の意味合いが強いと言えるかもしれません。造作工事(内装工事)の仕上げ精度の良否の確認ですね。

 

築浅の場合

次に、築浅住宅の場合です。実は築浅という言葉には明確な期間の定義はなくおよそ5年くらいという感じで使われることが多いのですが、ここでは品確法の瑕疵担保期間である10年までを対象としてみましょう。

この期間になると、竣工・引渡し時点では現れていなかった躯体の傾きといった悪さが現れてくるかも知れません

 

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そこで「住宅の引渡し後の保証期間10年を迎える前、一度住まいの傾斜を測ってみるのも良いのではないでしょうか?」という提案になります。

 

中古住宅

一方、新築・築浅に比べると、中古住宅(既存住宅)6/1,000については、築年数にもよりますが、この数値を超えている例も少なくありません。中古住宅の場合、経年により躯体(骨組み)そのものに歪みが出ている場合が少なくないからです。

中古住宅の診断(インスペクションでは、床や壁、柱の傾きの程度を測定することが必須と言われるゆえんです。中古住宅(既存住宅)では、写真のような傾きによる建具の隙間が見られることがあります。

住宅の傾斜

中古住宅の診断では、傾斜を確認する必要があります

 

2.家・マンションの傾き・・・その傾きを測るには

家・マンションの傾きは、床は3メートル以上離れた2点、壁や柱は2メートル以上離れた上下2点で測定します。

その測定には、デジタル水平器レーザー水平器がよく使われます。

インスペクション(住宅診断)のサイトには、たいてい使用診断機器などとして紹介されているので、ご覧になられた方も多いかもしれませんね。

 

家の傾き・マンションの傾き

(左)デジタル水平器、(中)赤色光のレーザー水平器、(右)緑色光のレーザー水平器

 

レーザー水平器(レベル)は、住宅の壁面に水平線と垂直線を光で示す測量器具です。現場では墨出し(すみだし=現場に基準線を描くこと)に使われます。

以前は赤色の光が主流でしたが、最近は緑色も人気です。

ちなみに、私たちN研(中尾建築研究室)も、最近はブルーグリーン光のものを使っています。

デジタル水平器は、床に置いたり、柱に当てるだけで傾斜が表示されるので便利ですが、長さが短いので、床3m、壁2mの距離で傾斜を測ることは難しいです。床面などの局所的な凹凸を拾ってしまう可能性があるからです。

しかし、前回のミステリアスな事例でお話ししたように、局所的な傾斜を測ることが必要な場面も実はあるので、こちらも必要です。

 

家の傾き・マンションの傾き

たとえばホームインスペクションでは、局所的な傾斜や勾配を測ることもあります。(左)バルコニーの床勾配、(右)階段の踏面の傾斜

 

N研-中尾-
と言うわけで、私たちN(中尾建築研究室)では、デジタル水平器で傾斜の傾向を把握して、レーザー水平器で詳細に測定する、という使い分けをしています。

 

これらに加えて、垂直方向については、下げ振り(おもりの付いた糸)を使うこともできます。先ほど建て入れ直しのお話のところの写真にあるのが「下げ振り棒」と呼ばれるものです。

一般の方は、良くビー玉ゴルフボールを持参されたりしますね。ビー玉は、床仕上げにもよりますが、ころがり過ぎる傾向があります。ゴルフボールくらいが良いかも知れません。ゴルフボールの場合、6/1,000の傾斜では約9割の確率で傾斜に沿って転がる、という実験結果もあります。

 

住宅の傾斜

ビー玉は転がり過ぎるかもしれません、ゴルフボールくらいが良いのかもしれませんね。

 

また最近では、スマートフォンに備わっている計測アプリの「水準器」を使う方も増えましたね。例えば、作り付けの棚のような局所的な水平精度を確かめることができますね。

 

3.住まいの「傾き」まとめ

前回、今回と、内容多めになりましたが、住宅の「傾き」についてのご紹介でした。簡単にまとめます。

住宅の「傾き」は、「住宅の物理的不具合」と「住まい手の健康障害」の両面を引き起こす可能性があることに注意しましょう。そして、健康障害については、個人差があること、また、長い間にゆっくり傾く場合など、慣れてしまって気がつかない場合があります。

②住宅の傾斜として、おおきく「新築住宅で3/1,000」、「中古住宅で6/1,000」というような目安を知っておくことは確かに大切かも知れません。しかしこれは、「傾斜」という表面にあらわれた不具合を、こうした数値で捉えることによって、たとえば基礎の欠陥のような「構造的な瑕疵があるかもしれないという断材料を提供するに止まるということには注意しておく必要があります。

③傾斜を計測する道具として、専門的な水平器から手軽なビー玉まで、いくつかのものがありますが、それぞれの特徴に応じた使い方をすることが望ましいでしょう。たとえば、大きく建物の傾斜を計測するためのものから、局所的な傾斜を測定する必要があるためのもの、どちらに傾いているか傾向を把握するためのもの・・・などです。

④傾斜の原因として、ここでは(1)地盤によるものと、(2)建物自体によるものに分けて考えてみました。(1)地盤については、不同沈下によるものが多く見られますが、大地震による地盤の動きなどもあります。(2)建物自体については、施工上の問題設計上の問題、住宅の経年劣化によるものなどがあります。また、たとえば、外壁や基礎のクラックが建物の傾斜と関係しているかどうかなどについて、注意して観察することも大切です。

 

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住宅診断(インスペクション)では、「ひび割れ」と並んで「傾斜」は表面に現れた不具合のサインです。今回は、家・マンションの傾きについて、ちょっと掘り下げてみました。

 

 

まずは「お住まいも健康診断を」・・・これが私たちN研(中尾建築研究室)のおすすめ

おすすめ?必要?不要?ホームインスペクションとは一体?

お住まいも健康診断を

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前回と今回ご紹介したように、慣れてしまって気付かずにいる「傾斜」というのも意外に多くあります。そうした傾きに限らず、悪さの兆候は早めに捉えたいものですね。住宅も定期的に「健康診断を」というのが、私たちN(中尾建築研究室)のおすすめです。

お住まいの「質」への意識の高い方々を、私たちは微力ながら応援したいと考えています。

 

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